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眼瞼下垂(がんけんかすい)とは|症状・原因・治療法を眼科専門医がわかりやすく解説

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「最近、おでこのしわが深くなった」「写真を撮ると目が眠そうに見える」「上を見るのに、つい顎を上げてしまう」――こうしたお悩みは、眼瞼下垂(がんけんかすい)のサインかもしれません。

眼瞼下垂は、上まぶたが下がってきて、視野の上半分が隠れてしまう病気です。「見た目の問題」と思われがちですが、実は視野が狭くなることで 肩こり・頭痛・眼精疲労 を引き起こす、れっきとした機能的な病気でもあります。

特に 50代以降で加齢に伴う眼瞼下垂(腱膜性眼瞼下垂) が増えています。長年コンタクトレンズを使ってこられた方も、リスクが高いことがわかっています。多くの場合、手術によって改善が期待でき、機能改善が目的で条件を満たせば 保険適用 にもなります。

このページでは、患者さんからよくいただく「自分は眼瞼下垂?」「手術は保険?それとも美容(自費)?」「筋トレで治せないの?」といったご質問にお答えする形で、眼瞼下垂の症状・原因・検査・治療を、順を追ってご説明します。

概要(眼瞼下垂とは)

上まぶたを開けるためには、いくつかの組織が連携して、まぶたの軟骨(瞼板:けんばん)を上に引き上げています。

  • 眼瞼挙筋(がんけんきょきん)まぶたを持ち上げる主役の筋肉
  • 挙筋腱膜(きょきんけんまく)挙筋の先に伸び、瞼板に付着して力を伝える
  • ミュラー筋補助的にまぶたを引き上げる小さな筋肉

眼瞼下垂は、この仕組みのどこかに不具合が出て、まぶたが本来の高さまで上がらなくなった状態です。原因によって、大きく次のタイプに分けられます。

眼瞼下垂は原因によっていくつかのタイプに分かれ、対処の方向性が大きく変わります。とくに「急に・片側だけ」起こったものは、神経の病気が隠れていることがあり注意が必要です。

腱膜性眼瞼下垂(加齢性) 最も多い

挙筋の先で瞼板を留めている腱膜が、加齢などで瞼板から外れたり緩んだりして起こります。中高年でいちばん多いタイプです。

見分け方 左右ともに、または片方が、年単位でゆっくり下がってくる。長年のコンタクト使用が背景にあることも。

対処 緩んだ腱膜を瞼板に固定し直す手術(挙筋前転術)で改善が期待できます。

先天性眼瞼下垂

生まれつき挙筋やそれを動かす神経の発達が十分でないために起こります。子どものうちに気づかれることが多いタイプです。

見分け方 幼少期から片方(多くは片側)のまぶたが上がりにくい。

対処 視力の発達への影響をみながら、時期と術式を専門医が判断します。

神経・筋によるもの

動眼神経麻痺、ホルネル症候群、重症筋無力症など、神経や全身の病気が背景にあるタイプ。まぶた以外の症状を伴うことがあります。

見分け方 ものが二重に見える、瞳孔の左右差、夕方に強くなる、急に片側だけ下がる、など。

対処 まず原因の病気を調べることが最優先。手術より先に内科・神経内科での検査が必要なことがあります。

偽(ぎ)眼瞼下垂

まぶたを上げる力は正常なのに、上まぶたの皮膚がたるんで覆いかぶさり、下がって見えるタイプ(眼瞼皮膚弛緩)です。

見分け方 まぶたの縁ではなく、その上の余った皮膚が垂れている。眉を上げると視界が広がる。

対処 余った皮膚を切除する手術が中心になります。

中高年で最も多いのは 腱膜性眼瞼下垂 です。これは「まぶたの筋肉が動かない」というより、腱膜が瞼板から外れて緩んでいる 状態です。だからこそ、腱膜を元の位置に固定し直す手術で改善が期待できます。

「見た目の問題」と思われがちですが、実際には 視野が狭くなる → おでこの筋肉で代償する → 肩こり・頭痛が出る という機能的な連鎖が背景にあります。改善すると「世界が明るくなった」「長年の肩こりが軽くなった」と驚かれる方が少なくありません。

症状

眼瞼下垂の代表的な症状は次のとおりです。

  • まぶたが重い・上が見えにくい視野の上半分が隠れる
  • 無意識に額のしわを寄せ、眉を引き上げているおでこの筋肉で代償
  • 顎を上げて、見下ろすように物を見る癖がついた
  • 眠そう・暗い印象に見える、写真で老けて見える
  • 夕方になると見えにくさが強くなる
  • おでこや眉上の頭痛、慢性的な肩こり
  • 目が疲れやすい(眼精疲労)
  • 二重まぶたの幅が広がった、または三重になった、左右差が出てきた

特徴的なのは、「眠そうに見える」「老けて見える」 という見た目の悩みと、「肩こりがつらい」「夕方に頭痛がする」 という機能的な悩みが、同じ原因(まぶたの下がり) から来ているということです。

かんたんセルフチェック

次の項目に、いくつ当てはまるか確認してみましょう。

鏡で正面を見たとき、上まぶたの縁が黒目(瞳孔)にかぶさっていませんか?

正常では、上まぶたの縁は黒目の上ふちにわずかにかかる程度です。瞳孔(黒目の中央)まで覆いかぶさっている場合、眼瞼下垂の可能性があります。眉を指で軽く押さえ、おでこの力を使わない状態で確認するのがコツです。

5つ以上当てはまる方は、眼瞼下垂の可能性があります。

まぶたが急に・片側だけ下がった、ものが二重に見える、瞳孔の左右差や強い頭痛をともなう場合は、緊急の病気が隠れていることがあります。すぐに受診してください。

これは簡易的なチェックであり、診断ではありません。気になる症状が続く場合は眼科で確認しましょう。

眼瞼下垂はゆっくり進むことが多く、ご本人は慣れてしまって気づきにくいものです。ご家族から「最近まぶたが下がってきた」と言われた方や、上のチェックに当てはまる方は、一度、眼科または眼形成・形成外科で評価を受けてみましょう。

原因とリスク

眼瞼下垂の主な原因とリスクは次のとおりです。

原因説明
加齢挙筋腱膜が瞼板から外れて緩む。最も多い原因
長期のコンタクトレンズ使用とくにハードコンタクト。装脱でまぶたが繰り返し引っ張られる
目をこする習慣アトピーや花粉症などで頻繁にこすると腱膜に負担がかかる
眼の手術歴白内障手術などのあとに生じることがある
先天性生まれつき挙筋や神経の発達が十分でない
神経・全身の病気動眼神経麻痺、ホルネル症候群、重症筋無力症など
外傷強い打撲などによる腱膜の損傷

とくに 長期のコンタクトレンズ使用 は、現代の中高年に多い背景です。20代からコンタクトを使い続けてきた方が、40〜50代で眼瞼下垂を発症することは珍しくありません。装脱のたびにまぶたを引っ張る動作が、腱膜に負担をかけると考えられています。

進行をできるだけ抑えるための工夫としては、次のようなものがあります。

  • コンタクトレンズをやさしく扱う装脱でまぶたを乱暴に引っ張らない
  • 目を強くこする習慣を控えるかゆいときは冷やす・点眼で対処
  • アトピーやアレルギーの治療をきちんと続ける

ただし、加齢による腱膜の緩みを完全に防ぐ方法はありません。気になる変化があれば、早めに相談していただくのが安心です。

検査・診断

眼科や眼形成・形成外科では、次のような評価を行います。

  • 問診いつから、片側か両側か、肩こり・頭痛・複視の有無、コンタクト歴
  • MRD-1の測定角膜反射(黒目の中央)から上まぶたの縁までの距離。下垂の重症度の指標
  • 挙筋機能検査眉を押さえ、おでこの力を使わずにまぶたを上げ下げできる幅を測る
  • 視野検査・視力検査まぶたを上げた状態との差をみる。保険申請の客観資料にも
  • 写真撮影術前後の比較や保険申請のため
  • 基礎疾患の除外重症筋無力症・神経の病気などが隠れていないか

MRD-1 は、眼瞼下垂の重症度を測る代表的な指標です。正常はおおむね4〜5mmで、2.7mm未満が下垂と判断する目安とされ、これが小さいほど、また数値がマイナスに近いほど下垂が強いと判断します。あわせて 挙筋機能 をみることで、腱膜が緩んだタイプ(挙筋の力は保たれる)なのか、挙筋の力そのものが弱いタイプ(先天性など)なのかを区別し、適した術式を選びます。

大切なのは、まぶたの下がりの裏に神経や全身の病気が隠れていないかを確認すること です。とくに片側だけ・急に下がった場合や、ものが二重に見える・瞳孔の左右差があるといったときは、重症筋無力症や動眼神経麻痺などを念頭に、必要に応じて内科・神経内科とも連携して調べます。検査自体は基本的に痛みを伴いません。

治療法の選択肢

眼瞼下垂は、点眼薬や内服薬、まぶたの「筋トレ」では治りません。緩んだ腱膜や余った皮膚が原因である以上、手術が基本の治療 になります。代表的な選択肢を比べてみましょう。

どの術式が適しているかは、タイプ・挙筋機能・皮膚のたるみの程度によって医師が判断します。費用や保険の扱いは医療機関により異なります。

治療法主な対象特徴保険か美容か
挙筋前転術(腱膜固定) 腱膜性(加齢性)眼瞼下垂緩んだ腱膜を瞼板に固定し直す、最も一般的な術式。再発が比較的少ない機能改善目的なら保険適用が中心
ミュラー筋タッキング 軽〜中等度で挙筋機能が保たれる例結膜側から行い、手術時間が短め。傷が外から見えにくい機能改善目的なら保険適用が中心
前頭筋吊り上げ術 挙筋機能が弱い例・先天性の重症例額の筋肉(前頭筋)の力でまぶたを引き上げる機能改善目的なら保険適用が中心
余剰皮膚の切除のみ 偽眼瞼下垂(皮膚のたるみが主因)たるんだ上まぶたの皮膚を切除して視界を確保機能か美容かで扱いが分かれる
保存的な対応(様子見) ごく軽度の例根本的には改善しない。経過観察にとどまる

最も多く行われるのは 挙筋前転術 で、加齢性の眼瞼下垂のほぼ標準的な術式です。手術は局所麻酔のもと片眼あたり30〜60分程度で、多くは日帰りで可能です。術後はまぶたの腫れが2週間ほど続き、2〜3か月かけて仕上がりが落ち着いていきます。腫れがある期間を考え、長期休暇に合わせて受ける方も多くいらっしゃいます。

ここで多くの方が気にされるのが、「保険なのか、美容(自費)なのか」 という線引きです。

  • 機能改善が目的(視野障害や肩こり・頭痛などがあり、検査で客観的に示せる)の場合は、保険適用 が中心になります。
  • 見た目を整えることが主目的(二重の形を整えるなど、機能的な問題が乏しい)の場合は、自費(美容) の扱いになります。

判断は医師が客観的な検査をもとに行います。費用や適用範囲は医療機関によって異なるため、最初の診察でしっかり相談しておくことが大切です。

自分でできるケア

  • コンタクトレンズの装脱を、まぶたを強く引っ張らずやさしく行う
  • かゆくても目を強くこすらない(冷やす・点眼で対処する)
  • アトピーや花粉症の治療を続け、こする原因を減らす
  • パソコンやスマホの合間に目を休め、無理に見開かない
  • 「眠そう」「老けて見える」が気になるだけでなく、肩こり・頭痛があれば一度評価を受ける

こんなときは眼科へ

  • 急に、または片側だけまぶたが下がってきた
  • まぶたの下がりに加え、ものが二重に見える(複視)
  • 左右の瞳孔の大きさが違う、強い頭痛をともなう
  • まぶたの下がりが夕方に強くなる、飲み込みや手足の力の入りにくさもある
  • 視野が狭く、肩こり・頭痛など生活に支障が出ている

とくに気をつけていただきたいのは、急に片側のまぶたが下がり、ものが二重に見える・瞳孔の左右差・強い頭痛をともなう ケースです。これは脳動脈瘤による動眼神経麻痺など、緊急の病気が隠れている可能性があります。「ただのまぶたの下がり」と自己判断せず、すぐに受診してください。また、まぶたの下がりが日内で変動する(夕方に悪化する)場合は重症筋無力症の可能性もあり、神経内科での評価が必要になることがあります。

手術について

ここでは、最も多い 挙筋前転術 を例に、手術の流れと術後の経過をもう少し具体的にご説明します。実際の方法や経過には個人差があり、医療機関によっても異なりますので、目安としてお読みください。

手術の大まかな流れは次のとおりです。

  • 局所麻酔 で行うことがほとんど注射のときに少しチクッとする程度
  • 片眼あたり30〜60分程度両眼でも当日のうちに終わることが多い
  • 多くは 日帰り で可能
  • 緩んだ腱膜を瞼板に縫い直し、まぶたの高さと左右差を調整
  • 抜糸は約1週間後吸収糸を使う場合は不要なことも

術後の経過は、おおむね次のように進みます。

  • 腫れ・内出血 は2週間ほどで目立たなくなることが多い
  • まぶたを冷やし、医師の指示どおり点眼や内服を続ける
  • 2〜3か月 かけて、まぶたの高さや形が自然に整っていく
  • 落ち着くまで、まぶたの左右差や違和感を感じることがある

人に会う予定がある方は、腫れの期間を見込んで、長期休暇などのタイミングに合わせると安心です。なお、仕上がりには個人差があり、左右差の微調整や、まれに再手術が必要になることもあります。気になる点は、術前のカウンセリングで遠慮なく確認しておきましょう。

よくある質問

Q 手術は保険ですか?それとも美容(自費)ですか?
視野障害や肩こり・頭痛などの機能的な症状があり、検査で客観的に示せて、医師が機能改善目的と判断すれば保険適用になることが多いです。一方、見た目を整えることが主目的の場合は自費(美容)の扱いになります。どちらに当たるかは検査をもとに医師が判断するので、最初の診察で相談してください。
Q 費用はどのくらいかかりますか?
保険適用の場合、自己負担は一般的な3割負担で片目あたりおおよそ2万円前後が一つの目安とされますが、検査や術式によって変わります。自費の場合は医療機関ごとに大きく異なります。正確な金額は、受診先で見積もりを確認するのが確実です。
Q 一度手術すれば、もう再発しませんか?
多くの場合、効果は長期的に保たれます。ただし加齢によって再び腱膜が緩み、下がってくることがあり、その場合は再手術を検討します。再手術が必要になる方は一部にとどまりますが、効果の持続には個人差があります。術後も定期的に経過をみてもらうと安心です。
Q 自分で治せますか?筋トレやマッサージで改善しますか?
まぶたの「筋トレ」やマッサージで腱膜の緩みや皮膚のたるみが元に戻ることは、基本的に期待できません。むしろ強くこすると悪化させる心配があります。原因に応じた手術が基本の治療です。気になる場合は、まず眼科で原因を確かめてもらいましょう。
Q 放置すると、どうなりますか?
視野の上が狭いままおでこの筋肉で代償し続けるため、肩こり・頭痛・眼精疲労が続いたり強まったりすることがあります。命に関わる病気ではありませんが、生活の質に影響します。ただし「急に・片側だけ」下がった場合は神経の病気が隠れていることがあり、これは放置せず早めの受診が必要です。
Q 手術の痛みやダウンタイムはどのくらいですか?
局所麻酔のため手術中の強い痛みはなく、麻酔の注射時に少しチクッとする程度です。術後はまぶたの腫れや内出血が2週間ほど続き、痛みは内服の鎮痛薬で対処できる範囲が一般的です。仕上がりが落ち着くまでには2〜3か月ほどかかります。感じ方には個人差があります。
Q コンタクトレンズは続けて大丈夫ですか?
すぐにやめる必要はありませんが、装脱のときにまぶたを強く引っ張らないことが大切です。手術を受ける場合は、術後しばらく(数週間)コンタクトを休む必要があります。可能であれば、メガネとの併用に切り替えると、まぶたへの負担を減らせます。
Q 何歳から手術を受けられますか?
症状があれば年齢の上限は基本的にありません。50〜70代の方が多いですが、コンタクトが背景の眼瞼下垂で30〜40代で受ける方も増えています。先天性の場合は、視力の発達への影響をみながら、時期を専門医が判断します。

眼瞼下垂は、見た目の問題と思われがちですが、視野・肩こり・頭痛など、生活の質に大きく影響する機能的な病気 です。原因のほとんどは加齢による腱膜の緩みで、手術によって改善が期待でき、機能改善が目的なら条件を満たして保険適用になることもあります。

一方で、まぶたの下がりの裏に、神経や全身の病気が隠れていることもあります。とくに 急に・片側だけ下がった、ものが二重に見える、瞳孔の左右差や強い頭痛をともなう といった場合は、緊急の可能性があるため、迷わず受診してください。

「自分は眼瞼下垂かな?」と感じたら、まずは眼科または眼形成・形成外科で、客観的な評価を受けていただくことをおすすめします。長年コンタクトを使ってこられた方、おでこの深いしわや慢性的な肩こりに悩む方は、一度、まぶたとの関連を考えてみていただければと思います。