非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs点眼)とは
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs点眼)は、目の炎症や痛みをやわらげるために使われる点眼薬の一群です。「NSAIDs(エヌセイズ)」とは “Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs” の頭文字で、その名のとおり「ステロイドではない抗炎症薬」を意味します。
炎症をおさえる目薬には、大きく分けてステロイド点眼とこのNSAIDs点眼の2種類があります。ステロイドは炎症をしっかりおさえる力が強い一方で、長く使うと眼圧が上がったり白内障を進めたりすることがあります。NSAIDsはステロイドとはしくみが異なるため、こうした眼圧上昇や白内障のリスクが基本的にない点が大きな特徴です。そのため、手術後の炎症対策など、ステロイドと使い分けたり併用したりしながら活躍する身近なお薬です。
どちらの薬を、どのくらいの期間使うかは、お一人おひとりの目の状態によって変わります。自己判断で選ばず、眼科医の指示にしたがって使いましょう。
どんなしくみで効くのか
目に炎症が起きると、体の中で「プロスタグランジン」という物質が作られます。このプロスタグランジンは、痛みを強めたり、血管を広げて赤みやむくみを引き起こしたりする、いわば炎症の”火付け役”のような存在です。
NSAIDsは、このプロスタグランジンを作り出すときに必要な「シクロオキシゲナーゼ(COX)」という酵素のはたらきをブロックします。酵素という「製造装置」を止めることで、炎症物質であるプロスタグランジンそのものの産生をおさえる、というしくみです。火事にたとえるなら、燃え広がった火を消すのではなく、火種が作られる前の段階で元を断つようなイメージです。
ステロイドがもっと広い範囲で炎症をおさえるのに対し、NSAIDsはこの「プロスタグランジン」というポイントにしぼって作用します。しくみが違うからこそ、ステロイドにはない使いどころがあるわけです。
主な薬の種類
NSAIDs点眼にはいくつかの種類があり、商品名(一般名)で表すと次のようなものがあります。それぞれ有効成分や使う回数の目安が異なり、目的に応じて使い分けられます。
| 商品名 | 一般名 | 後発品(ジェネリック) |
|---|---|---|
| ブロナック | ブロムフェナク | あり |
| ジクロード | ジクロフェナク | あり |
| ネバナック | ネパフェナク | なし(先発のみ) |
| ニフラン | プラノプロフェン | あり |
このうち、点眼回数が1日2回と少なめで、手術後の炎症や黄斑浮腫(おうはんふしゅ/CME)の予防によく使われるのがブロナックです。
→ 詳しくはこちら:ブロナック点眼液
どの薬が合うかは、目の状態や他に使っているお薬との兼ね合いで決まります。効果や使い心地には個人差がありますので、気になる点は処方した眼科医にご相談ください。
どんなときに使うか(適応)
NSAIDs点眼が使われる主な場面には、次のようなものがあります。
- 白内障などの手術の前後:手術にともなう炎症をおさえ、術後の回復をサポートします。手術中の散瞳(瞳を開いた状態)を保つ目的で術前に使われることもあります。
- 手術後の黄斑浮腫(CME)の予防・治療:網膜の中心部「黄斑」にむくみが出るのを防ぐ目的で用いられます。
- 目の炎症全般:結膜やまぶたなどの炎症、外眼部・前眼部の炎症症状に対して使われます。
- 痛みや異物感をともなう炎症:プロスタグランジンをおさえることで、痛みの緩和も期待できます。
特に白内障手術の前後では、ステロイド点眼と組み合わせて使われることがよくあります。どの薬をどの順番でさすかは処方ごとに決められていますので、指示どおりに使うことが大切です。
副作用・注意点
NSAIDs点眼は比較的使いやすいお薬ですが、この系統に特徴的な注意点もあります。
- しみる・刺激感:さした直後に、しみる感じや軽い痛み、目の充血が出ることがあります。
- 角膜への影響:まれに、目の表面(角膜)に傷ができたり、治りが遅くなったりすることが報告されています。ドライアイのある方や、角膜の状態がよくない方では特に注意が必要です。使っていて目の見え方や痛みがいつもと違うと感じたら、早めに眼科を受診してください。
- アレルギー:成分に対してかゆみ・腫れなどのアレルギー症状が出ることがあります。
- ぜんそくのある方:飲み薬のNSAIDsでぜんそく発作を起こしたことがある方(アスピリンぜんそく)は、点眼でも注意が必要な場合があります。持病やアレルギーは必ず申告してください。
副作用の出方には個人差があります。気になる症状が続くときは、自己判断で中止せず、まずは眼科医に相談しましょう。
上手な使い方
点眼薬の効果をしっかり引き出すために、次のようなコツを意識してみてください。
- 手を清潔に:さす前に手を洗い、容器の先がまつげや目に触れないようにします。
- 1回1滴で十分:目に入る量は決まっているため、何滴もさす必要はありません。あふれた分は効果を高めるものではなく、むしろ周りの皮膚への刺激になることがあります。
- 複数の目薬を使うとき:続けてさすと先の薬が流れてしまうため、少し時間をあけてからさしましょう。順番や間隔は薬ごとに異なるので、処方時の説明にしたがってください。
- さした後は目を閉じて:しばらく目を閉じ、目頭を軽くおさえると薬がとどまりやすくなります。
- 決められた期間きちんと:症状が落ち着いても、勝手にやめると炎症がぶり返すことがあります。
具体的な回数や使う期間は処方によって異なります。自己判断で増やしたり中止したりせず、指示にそって使ってください。
よくある質問
Q. ステロイドの目薬と何が違うのですか? A. どちらも炎症をおさえる薬ですが、しくみが異なります。ステロイドは強く広く炎症をおさえる反面、長く使うと眼圧上昇や白内障のリスクがあります。NSAIDsはプロスタグランジンの産生をしぼっておさえ、こうしたリスクが基本的にない点が特徴です。目的に応じて使い分けたり、併用したりします。
Q. 市販の目薬とは違うのですか? A. ここで紹介しているNSAIDs点眼は、医師の診察と処方が必要な医療用のお薬です。市販薬とは成分や濃度が異なりますので、症状があるときは自己判断せず眼科を受診してください。
Q. ジェネリック(後発品)に変えても大丈夫ですか? A. 後発品のあるものは、有効成分が同じであれば切り替えられる場合があります。ただし使い心地などに個人差を感じる方もいます。希望があれば処方時に眼科医や薬剤師に相談してみてください。
このページは一般的な情報をまとめたものです。お薬の選択や使い方、副作用への対応には個人差があります。気になる症状があるときや、使用中に不安を感じたときは、自己判断で中止せず、眼科医に相談・受診をおすすめします。