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硝子体内注射(目の注射)|痛み・回数・費用・注射後の注意を眼科医が解説

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目次
  1. 硝子体内注射とは
  2. 対象となる病気
  3. 注射の流れ
  4. 費用の目安
  5. 効果と治療の続け方
  6. 注射後の注意とリスク
  7. よくある質問

「目に注射をすると言われた」――そう聞いて、思わず身がすくんでしまった方も多いのではないでしょうか。目に針を刺すというイメージから、強い不安や恐怖を感じるのは自然なことです。

けれども硝子体内注射(しょうしたいないちゅうしゃ)は、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫などに対する 標準的な治療 として、いまや国内で広く行われている処置です。多くは 外来・点眼麻酔・数分 で済み、入院も切開も必要ありません。

このページでは、患者さんからよくいただく「痛いの?」「何回打つの?」「費用は?」「打った後は何に気をつければいい?」というご質問にお答えする形で、硝子体内注射の全体像をご説明します。使うお薬の詳しい違いは 抗VEGF硝子体内注射、対象となる病気は 加齢黄斑変性糖尿病網膜症 の解説もあわせてご覧ください。

硝子体内注射とは

硝子体 は、目の奥の大部分を満たしているゼリー状の透明な組織です。硝子体内注射は、この硝子体の中にお薬を直接注入することで、その奥にある 網膜や黄斑(ものを見る中心部分)に薬を届ける 治療法です。

点眼薬や飲み薬では網膜の奥まで十分な量の薬を届けにくいのに対し、注射なら必要な場所に直接作用させられるという利点があります。だからこそ、黄斑のむくみや出血をともなう病気の治療として広く使われています。

注入するお薬は、主に次の3つのグループに分けられます。

どのお薬を使うかは、病気の種類や状態に応じて眼科医が個別に判断します。使うお薬の詳しい違いや銘柄ごとの特徴については、抗VEGF硝子体内注射 でくわしくご紹介しています。

対象となる病気

硝子体内注射は、主に網膜の中心(黄斑)にむくみや出血が起こる病気に対して行われます。代表的なものは次のとおりです。判断には個人差があり、適応は眼科医が個別に行います。

病気どんな状態か
滲出型加齢黄斑変性黄斑の下に異常な血管ができ、出血やむくみが起こる
糖尿病黄斑浮腫糖尿病で網膜の中心(黄斑)がむくむ
網膜静脈閉塞症にともなう黄斑浮腫網膜の静脈が詰まり、むくみが起こる
病的近視の脈絡膜新生血管強い近視にともなってできる異常な血管
重い眼内炎抗菌薬を目の中に直接届ける治療として

中高年の方で最も多いのは、滲出型の加齢黄斑変性糖尿病黄斑浮腫 です。これらの病気そのものについては、加齢黄斑変性糖尿病網膜症 の解説ページでくわしくご説明しています。同じ病気でも進み方には個人差があり、注射が必要かどうかは検査の結果をふまえて主治医が判断します。

注射の流れ

ここでは、検査から注射当日、その後の通院までの一般的な流れをご説明します。「手術」と聞いて身構える方もいますが、切開や縫合をともなう手術とは違い、外来で行う処置です。通院回数やスケジュールは施設や病状によって異なるため、あくまで目安としてご覧ください。

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    受診・検査

    目安:注射の前

    視力や眼圧の検査に加え、OCT(網膜の断層撮影) で黄斑のむくみや出血を確認し、注射が必要かを判断します。初回は造影検査を追加することもあります。

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    消毒・麻酔

    目安:処置室で数分

    点眼麻酔 をしたあと、目のまわりと白目を ヨード液で十分に消毒 します。消毒は眼内炎を防ぐ最も大切な工程です。開瞼器(かいけんき)でまぶたをやさしく開いて固定します。

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    注射

    目安:数十秒〜1分

    角膜の縁から 約3.5〜4mm離れた白目 に、極細の針で薬を注入します。強い痛みはほとんどなく、「グッと押される感じ」と表現される方が多いです。切開や縫合はありません。処置中は 明るいライトのほうを見ているよう案内され、針そのものはまぶしくてほとんど見えない ことが多いです。まぶたは開瞼器で開いて固定されるので、まばたきを無理に我慢する必要はありません。

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    注射後の確認・帰宅

    目安:そのまま外来で

    必要に応じて見え方や眼圧を確認し、抗菌点眼 を処方されて当日中に帰宅できます。入院は不要です。注射直後は薬が黒い影として見えることがありますが、多くは数日〜数週間で薄れていきます。

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    通院・くり返し

    目安:導入後は1〜数か月ごと

    多くの病気では 導入期に1か月ごとに数回 注射し、その後は病状を見ながら間隔をあけて続けます。1回で終わる治療ではなく、続けることで視力を保つ 治療です(詳しくは次章)。

費用の目安

硝子体内注射は 保険適用 で、高額療養費制度を使うと実際の自己負担はさらに下がることが多い処置です。以下はあくまで概算の目安です(詳しい条件は下の表をご覧ください)。

注射1回あたりの費用の目安(3割負担)

すべて概算の目安です。使うお薬・施設・年度の診療報酬や薬価の改定・所得区分によって変わります。保険適用で、高額療養費制度を使うと月の自己負担に上限があり、実際の負担はさらに下がることが多いです。検査・診察代は別途かかります。正確な額は受診先の医療機関や加入する保険者にご確認ください。

内訳使うお薬の例1回あたりの目安(3割)
抗VEGF注射 抗VEGF薬約5〜6万円(薬剤費が大半)
ステロイド注射 トリアムシノロン 等約1〜2万円
注射手技料(共通) 約5,000円(薬剤費とは別)

もう少し詳しく見ていきましょう。いずれも目安であり、施設や状態によって異なります。

注射は1回で終わらず続けることが多いため、総額がかさみやすい 点には注意が必要です。両眼に行う場合はさらに増える可能性があります。費用はあくまで概算であり、個人差があります。お薬の銘柄ごとの費用の違いは 抗VEGF硝子体内注射 もあわせてご覧ください。

効果と治療の続け方

硝子体内注射は、「視力を回復させる」というよりも「今の見え方をできるだけ長く保つ」ことを目的とした治療です。早い段階で始められた場合には見え方の改善が期待できることもありますが、すでに網膜に傷が残っていると元には戻らないこともあり、効果には個人差があります。過度に期待しすぎず、また過度に悲観しすぎないことが大切です。

ここで知っておいていただきたいのは、症状が落ち着いているのは治療が効いているためであることが多い という点です。自己判断で注射を中断すると、再びむくみや出血がぶり返して視力が下がることがあります。一方で、放置すれば病気が進行し、視力低下や失明につながることもあります。やめどきは必ず主治医と相談してください。

通院の目安は次のとおりです。間隔や回数には個人差があり、終了の時期は主治医が個別に判断します。

段階目安
導入期1か月ごとに数回
維持期病状を見ながら1〜数か月ごと
長期個別に判断、数年以上続くことも

近年は投与の間隔を延ばせるお薬も増え、通院の負担が以前より軽くなってきています。お薬ごとの効果や投与間隔の違いについては、抗VEGF硝子体内注射 でくわしく解説しています。

注射後の注意とリスク

硝子体内注射で最も警戒すべきなのが 眼内炎(目の中の重い感染) です。眼内炎は まれ ですが、発症すれば重い視力障害につながりうる、最も重篤な合併症です。感染としての眼内炎が起こる頻度は 概ね0.05%前後(おおむね数千回に1回程度) と低く、白内障手術や硝子体手術と同じくらいまれです。なお一部の新しいお薬では、感染とは別の 非感染性の眼内の炎症 がやや高い頻度で報告されることもあり、これは感染としての眼内炎とは区別して考えます。「めったに起きないこと」と「起きたらすぐ受診すべきこと」の両方を、あわせて知っておいてください。

とくに注意したいのは、眼内炎が 注射の数日後から1週間ほどたって現れることがある という点です。注射の翌日に問題がなくても油断はできません。「昨日は大丈夫だった」と我慢せず、下記の危険サインに気づいたら時間外でもすぐに受診してください。

注射のあと守ること(セルフケア)

  • 処方された抗菌点眼を、指示どおりの回数・日数きちんと続ける
  • 当日は目をこすらない・押さえない
  • 当日は洗顔・洗髪で目に水が入らないよう注意する(翌日以降は指示に従う)
  • 当日の激しい運動・温泉・プールは控える
  • 注射直後からある黒い影は“だんだん薄れていく”ものが多く心配いりません(逆に影や飛蚊が“急に増える”ときは下記のとおり受診を)
  • 注射当日は見えにくいことがあるため、車の運転は控え、送迎や公共交通機関での通院がおすすめ

すぐに眼科へ(眼内炎・網膜剥離などの危険サイン)

  • 目の強い痛み・ズキズキする痛みが出てきた
  • 急に見えにくくなった・視界がかすんで悪化した
  • 充血がどんどん強くなる、目やにが急に増えた
  • まぶしさ(羞明)や、飛蚊(黒い点や影)が急に増えた
  • 視界の一部が欠ける・黒いカーテンがかかるように見える
  • 光が走るように見える(光視症)

これらは重い感染(眼内炎)や網膜剥離(もうまくはくり)のサインのことがあり、注射後数日〜1週間たってから現れることもあります。網膜剥離は時間との勝負になる病気です。気づいたら我慢せず、時間外でも一刻も早く受診してください。

注射後の危険サインは、早く気づいて受診することが何より大切です。眼内炎のほかにも、まれですが次のようなリスクがあります。多くは一過性ですが、気になる症状があれば主治医にご相談ください。

その他のリスク補足
眼圧の一時上昇注射直後に起こることがあり、多くは経過観察。ステロイドでは高めに出やすい
結膜下出血・結膜のむくみ白目の赤みなど。多くは一過性で自然に治る
水晶体損傷・網膜裂孔/剥離ごくまれな手技にともなう合併症
全身性のリスクごくわずかな薬剤が全身へ移行しうる。脳卒中などの既往がある方は主治医に申告を

これらの副作用やお薬ごとのリスクの詳しい説明は、抗VEGF硝子体内注射 でくわしく解説しています。

よくある質問

Q 目に注射をするのは痛いですか?
強い痛みはほとんどありません。点眼麻酔をしたうえで行うため、注射の感覚は「グッと押される」「軽い違和感」程度という方が多いです。針は極細で、処置自体は数十秒から1分ほどで終わります。感じ方には個人差があります。
Q 入院は必要ですか?手術とは違うのですか?
入院は不要で、外来で行う処置です。切開や縫合をともなう手術とは異なり、消毒と点眼麻酔のうえ細い針で薬を注入するだけなので、多くの方は当日中に帰宅し、翌日には普段どおりの生活に戻れます。
Q 注射は何回くらい続けますか?一生打ち続けるのですか?
病気や経過によって異なります。多くは導入期に1か月ごとに数回注射し、その後は病状を見ながら間隔をあけて続けます。1回で終わる治療ではなく、続けることで視力を保つ治療です。間隔を延ばせたり中止できたりする場合もありますが、終了の時期は主治医が個別に判断します。
Q 注射をやめるとどうなりますか?
病気の勢いが再び強まり、むくみや出血がぶり返して視力が下がることがあります。症状が落ち着いているのは治療が効いているためであることが多いので、自己判断で中止せず、やめどきは必ず主治医と相談してください。
Q 注射のあと、運転や仕事はできますか?
多くの方は当日から日常の活動が可能です。ただし注射直後は薬が視界に影として見えたり、ぼやけたりすることがあるため、当日の運転は控え、公共交通機関や送迎での通院をおすすめします。翌日からは通常どおりに戻れる方が多いです。
Q 両眼とも注射が必要なときは、同じ日に両目打つのですか?
施設や病状によって異なります。同じ日に両眼へ行う施設もあれば、日を分けて片眼ずつ行う施設もあります。万一の感染が両眼に及ぶことを避けるため別日にする場合もあり、どちらにするかは主治医が病状や通院の負担をふまえて判断します。通い方も含めて遠慮なくご相談ください。
Q 血をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいますが受けられますか?
基本的には、お薬を続けたまま受けられることが多い処置です。針が極細で出血のリスクが小さいためですが、白目に出血(結膜下出血)が出やすくなることはあります。自己判断で中止すると脳梗塞などの危険が高まるため、勝手にやめず、服用中のお薬は必ず事前に申告してください。中止の要否は主治医が判断します。
Q 注射のあと、どんなときにすぐ受診すべきですか?
目の強い痛み、急な見えにくさ、充血や目やにの悪化、まぶしさや飛蚊の急な増加に加え、視界の一部が欠ける・黒いカーテンがかかる・光が走って見える(光視症)といった症状があるときは、重い感染(眼内炎)や網膜剥離のサインのことがあります。注射の数日後から1週間ほどたって現れることもあるため、油断せず、異変を感じたら時間外でもすぐに眼科へ連絡してください。

硝子体内注射は、外来・短時間で行える 確立された治療 ですが、効果を保つためには 続けること、そして注射のあとの 眼内炎などのサインに注意すること が大切です。「目に注射」と聞くと不安になりますが、点眼麻酔のもと数分で終わる処置であり、多くの方が見え方を保つために受けられています。

気になる症状があれば、まず一度眼科で相談してみてください。経過や効果には個人差があります。

使うお薬の詳しい違いは 抗VEGF硝子体内注射(薬剤の詳細)、対象となる病気は 加齢黄斑変性糖尿病網膜症 の解説ページもあわせてご覧ください。