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網膜光凝固(網膜レーザー)|糖尿病網膜症・網膜裂孔の治療を眼科専門医が解説

監修: アイテラス編集部(眼科専門医監修)
公開: 更新: 最終監修:
目次
  1. 網膜光凝固とは
  2. 種類
  3. 適応:こんな方に行う
  4. 手術の流れ
  5. 費用の目安
  6. 効果
  7. リスク・合併症
  8. メリットとデメリット
  9. よくある質問

「糖尿病で網膜のレーザー治療を勧められた」「健診で網膜に穴が見つかってレーザーを受けることになった」――こうした方が受ける治療が 網膜光凝固(もうまくひかりぎょうこ) です。

網膜光凝固は、レーザーを網膜の特定の部分に当てて凝固させる治療で、糖尿病網膜症の進行抑制、網膜裂孔からの網膜剥離予防、加齢黄斑変性などに広く使われてきました。外来で短時間に行え、痛みも比較的少ない 治療です。

ただし、目的は「進行を止める」ことで、すでに失われた視力を取り戻すものではありません。「早く受けるほど効果的」という性格の治療です。

このページでは、患者さんからよくいただく「痛い?」「視力は戻る?」「何回受けるの?」「費用は?」といったご質問にお答えする形で、網膜光凝固について整理してご説明します。

網膜光凝固とは

網膜は、眼の奥にある像を映すフィルムのような組織です。網膜のどこかに病変があると、その部分の網膜を意図的に レーザーで焼き固める ことで、進行を止めたり、合併症を防いだりします。

主な目的は3つあります。

  1. 新生血管の発生を抑える(糖尿病網膜症など)
  2. 網膜の穴(裂孔)を取り囲み、網膜剥離を防ぐ(網膜裂孔)
  3. 特定の異常血管・出血源を直接焼き固める(網膜静脈閉塞症など)

主な適応疾患は次のとおりです。

適応疾患治療目的
糖尿病網膜症(増殖前〜増殖期)新生血管発生の抑制、進行抑制
糖尿病黄斑浮腫(限局型)浮腫の原因点に直接照射
網膜裂孔裂孔の周囲を焼き固め、網膜剥離を予防
網膜静脈閉塞症新生血管の予防、黄斑浮腫への部分照射
未熟児網膜症小児領域
加齢黄斑変性(古典的)現在は抗VEGFが主流、補助的に使われることも

中高年で最も多いのは 糖尿病網膜症網膜裂孔 に対する施行です。

種類

レーザー照射のパターンによっていくつかの方法があります。

種類内容
網膜光凝固(局所)特定の病変部に集中照射
網膜光凝固(汎網膜)網膜の周辺部全体に多数のレーザーを当てる。糖尿病網膜症の標準
格子状光凝固黄斑浮腫の限局部に格子状に照射
マイクロパルスレーザー弱い出力で照射、組織損傷を抑える新世代の技術

適応:こんな方に行う

糖尿病網膜症

増殖前で予防的に行うか、増殖期に進んでから行うかは、患者さんの状態と担当医の判断によります。早めに行うほど効果が出やすいとされています。

網膜裂孔

網膜静脈閉塞症

手術の流れ

1. 術前準備

2. 治療当日

3. 治療中の感覚

4. 治療後

費用の目安

保険適用 です。3割負担の方の場合:

項目費用イメージ
1回のレーザー治療約1万〜2万円
汎網膜光凝固(複数回必要)合計 約3〜6万円
高額療養費制度適用後自己負担上限まで

医療費控除の対象です。高額療養費制度を活用できます。

効果

期待できる効果

期待できないこと

進行を止める治療であって、回復させる治療ではない」という理解が、納得して治療を受ける鍵になります。

リスク・合併症

リスク頻度・対処
視野の小さな欠損凝固部分は機能を失うため、汎網膜光凝固では周辺視野が少し狭くなる
黄斑浮腫の悪化まれ、ステロイドや抗VEGF併用で対処
暗順応の低下暗いところで見えにくくなる方も
一時的なまぶしさ数日〜数週間で改善
視力低下適切に行えばまれ
眼内出血まれに

特に 汎網膜光凝固後の周辺視野の軽い狭まり は知っておくべきです。「視野が少しせまくなったけれど、増殖糖尿病網膜症や失明のリスクを大きく下げられた」という、デメリットを上回るメリットがある治療です。

メリットとデメリット

メリット外来で短時間 / 保険適用 / 進行抑制効果が確立 / 合併症は限定的
デメリット治療中のまぶしさ / 視野が少し狭くなることがある / 視力は戻らない / 複数回の通院が必要

よくある質問

Q. 網膜光凝固は痛いですか?

A. 軽い痛み・まぶしさを感じることが多い です。多くの方は耐えられる範囲ですが、痛みに敏感な方や治療範囲が広い場合は、結膜下麻酔や球後麻酔を追加することで楽になります。担当医に相談してください。

Q. レーザー治療で視力は回復しますか?

A. 回復させる治療ではありません。網膜光凝固は「進行を止める・合併症を防ぐ」治療です。すでに視力が落ちている部分が、レーザーで戻ることはありません。だからこそ、早期に行うことが大切です。

Q. 何回くらいレーザーを受ければよいですか?

A. 疾患と進行度によります。網膜裂孔1か所なら1回で済むことが多いですが、汎網膜光凝固は 2〜4回に分けて行う ことが一般的です。糖尿病網膜症は治療を続けていく性格の病気で、必要に応じて追加照射を行うこともあります。

Q. レーザー治療後、運転はできますか?

A. 散瞳薬の影響で当日の運転は避けてください(検査後3〜4時間はまぶしさが残ります)。翌日からは通常通り運転可能ですが、夜間運転の見え方に少し違和感が出る方もいます。

Q. 糖尿病で「もうレーザーが必要」と言われました。怖いです…

A. レーザーが必要な段階は、確かに病気が進んできているサイン です。けれど、レーザーは進行を止めるための積極的な手段であり、「ここでしっかり進行を止めれば、視力を長く保てる」という前向きな治療です。怖がる気持ちは自然ですが、放置のほうがはるかに危険です。

Q. 抗VEGF注射とレーザー、どちらが先?

A. 病状に応じて使い分けます。糖尿病黄斑浮腫には抗VEGF注射が第一選択、増殖糖尿病網膜症にはレーザーが基本、両方を組み合わせることもあります。担当医が個別に判断します。

Q. レーザー後にスポーツ・運動は制限されますか?

A. 激しい運動は数日避ける のが基本です。それ以降は日常的な運動は問題ありません。ただし、強い衝撃のあるコンタクトスポーツは、担当医と相談してください。


網膜光凝固は、糖尿病網膜症や網膜裂孔の進行を食い止める標準治療 です。「治す」治療ではなく「進行を止める」治療なので、早期に行うことが視力を守る最大のポイントです。

特に糖尿病をお持ちの方は、症状がなくても定期的な眼底検査 を受け、レーザーが必要な段階が来たら遅れずに治療を受けることをおすすめします。

関連疾患の詳細は 糖尿病網膜症の解説ページ網膜剥離の解説ページ もあわせてご覧ください。