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緑内障チューブシャント手術(インプラント)|費用・流れ・濾過手術との違い

公開: 更新: 最終監修:
目次
  1. チューブシャント手術とは
  2. アーメドとバルベルトの違い
  3. この手術が検討されるのはどんなとき
  4. 手術の流れ
  5. 費用の目安
  6. 他の緑内障治療での位置づけ
  7. 手術後の生活
  8. リスク・合併症
  9. よくある質問
  10. 受診のときに主治医に聞いておくとよいこと

「点眼もレーザーも、これまでの手術もうまくいかず、『次はチューブを入れる手術を』と言われた」「器具を目に入れて大丈夫なのか」「もう打つ手がないということ?」――そんな不安を抱えてこのページにたどり着いた方も多いと思います。

最初に、最も大切なことをお伝えします。この手術は、狭くなった視野や落ちた視力を回復させる手術ではありません。 緑内障で一度傷んだ視神経は元に戻らず、失われた視野が戻ることはありません。目的は、眼圧を大きく下げて、これ以上の進行に強くブレーキをかける こと。白内障手術が「見え方を取り戻す」手術であるのに対し、緑内障の手術は「これ以上悪くしない」ための手術です。それでも、進行を食い止める意義は非常に大きい手術です。

そしてもう一つ。「難治性緑内障」と言われると不安になりますが、難治=末期や失明が近い、という意味ではありません。 点眼やこれまでの手術では眼圧が下がりにくい状態を指す言葉で、チューブシャント手術という、眼圧を下げる手立てがまだ残っているということでもあります。失明と直結する話ではありませんので、不安な点は主治医にそのまま質問してみてください。

緑内障の病気そのものについては 緑内障の解説ページ を、標準的な緑内障手術については 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)の解説 もあわせてご覧ください。

チューブシャント手術とは

チューブシャント手術は、シリコーン製の チューブ(細い管)プレート(房水をためる受け皿) を眼に留置し、眼の中にたまった房水(目を満たす液体)を 眼の外へ逃がす新しい流出路 を作って眼圧を下げる手術です。緑内障インプラント手術とも呼ばれます。

「ステントを少し入れるだけ」というイメージを持たれることがありますが、実際にはチューブとプレートを眼球の後ろのほうまで留置する、しっかりとした手術です。標準的な 線維柱帯切除術 が結膜の下に房水をためる水ぶくれ(濾過胞)を作るのに対し、チューブシャント手術では 眼の奥に置いたプレートが房水の受け皿 になります。この「受け皿の場所」が、両者の構造的な違いです。

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    房水をためるプレートを強膜に縫いつける

    しくみ:受け皿を作る

    眼球の壁(強膜)の上に、房水をためるための小さなプレート(受け皿)を縫着します。プレートは結膜でおおわれ、外からは見えません。

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    プレートから伸びるチューブを眼の中に挿入する

    しくみ:流れ道をつなぐ

    プレートから伸びる細いチューブの先端を、前房(角膜のすぐ内側)に挿入します。眼の状態によっては毛様体扁平部(眼の奥)へ入れることもあります。チューブの露出を防ぐため、強膜や心膜のパッチで上から覆って保護します。

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    房水がチューブを通ってプレートへ流れる

    しくみ:眼圧を下げる

    眼内の房水がチューブを通ってプレート周囲にできる被膜(膜状の組織)の下へ流れ込み、そこからゆっくり吸収されます。これにより眼圧が下がります。線維柱帯切除術が結膜下の「濾過胞」に房水をためるのに対し、こちらは「プレート周囲の被膜」が受け皿になる点が異なります。

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    (弁のないタイプ)はじめは流れすぎないよう調整する

    しくみ:早期の流れすぎを防ぐ

    バルベルトのように調整弁のないタイプでは、術後すぐに房水が流れすぎて眼圧が下がりすぎるのを防ぐため、チューブを溶ける糸で一時的に結紮(けっさつ)しておきます。アーメドのように弁のあるタイプでは、手術の段階で調整弁が組み込まれています。

アーメドとバルベルトの違い

チューブシャント手術で使われる代表的な器具に、アーメド緑内障バルブバルベルト緑内障インプラント があります。最も本質的な違いは、房水の流れを調整する「弁」があるかどうか です。

アーメドとバルベルトの違いは、どちらが優れているということではなく、目標とする眼圧や目の状態に応じた使い分けです。最終的にどちらを使うかは、主治医とよく相談して決めます。

アーメド緑内障バルブ 弁あり

プレートに圧力を調整する弁が内蔵されており、眼圧が一定以下に下がると弁が閉じて房水が流れにくくなるしくみです。

見分け方 術後早期から効き始め、急激な低眼圧(流れすぎ)が起こりにくいのが特徴とされます。

対処 できるだけ早く眼圧を下げたい場合や、流れすぎ(低眼圧)を避けたい目に向きやすいとされます。

バルベルト緑内障インプラント 弁なし

流れを調整する弁がなく、より低い眼圧をめざせる一方、放置すると術直後に房水が流れすぎてしまいます。

見分け方 術後早期はチューブを糸で結紮して流量を制限し、糸が溶ける数週間後から本格的に効き始めます。

対処 より低い眼圧を長期にめざしたい目に向きやすいとされますが、術後早期は二段階の眼圧管理が必要です。

両者の特徴を整理すると、次のようになります。数値や傾向には研究や個人差があり、「〜とされます」という前提でご覧ください。

アーメド(弁あり)とバルベルト(弁なし)の比較

どちらが優れているというものではなく、目の状態や目標眼圧に応じた使い分けです。効果や経過には個人差があります。

比較の軸アーメド(弁あり)バルベルト(弁なし)
流れを調整する弁 あり(内蔵)なし
効き始める時期 術後早期から結紮糸が溶ける数週間後から
術後早期の流れすぎ(低眼圧) 起こりにくいとされる一時的に結紮して予防する
長期の眼圧を下げる力 中〜強より強い傾向とされる
術後早期の眼圧コントロール 安定しやすい初期はやや読みにくい
向きやすい状況 早く眼圧を下げたい・低眼圧を避けたいより低い眼圧を長期にめざしたい

研究では、術後1年の平均眼圧はバルベルトのほうが低めに下がる一方、術後早期の合併症はアーメドのほうが少ない傾向にあると報告されています。いずれも目安であり、実際にどちらを選ぶかは目の状態によって主治医が判断します。

この手術が検討されるのはどんなとき

チューブシャント手術の適応は、難治性緑内障 に限られます。見え方の良し悪しで決めるのではなく、「点眼・レーザー・MIGS線維柱帯切除術 を行っても眼圧が下がりきらない」「結膜の状態などから濾過手術が難しい」といった目が対象です。

チューブシャント手術が検討される目・セルフチェック

チューブシャント手術は、点眼やこれまでの手術では眼圧が下がりにくい『難治性緑内障』が対象です。次の項目に当てはまるほど、検討の対象に近づきます。

過去に緑内障の手術(線維柱帯切除術など)を受けたのに、また眼圧が上がってきていますか?

一度濾過手術を受けたあとに眼圧が再び上昇した目は、結膜に瘢痕(きずあと)ができて再手術が難しいことがあり、チューブシャント手術が前向きに検討される代表的な状況です。

これらは『当てはまる数』で決めるものではなく、1項目でも単独で手術を検討する理由になります。最終的に手術を受けるかどうかは、目の状態を総合的にみて主治医と相談して決めます。

急に目が痛む・かすむ・頭痛や吐き気を伴う強い眼痛がある場合は、急性の眼圧上昇(緑内障発作)などの可能性もあるため、すぐに眼科を受診してください。

これは簡易的なチェックであり、診断ではありません。気になる症状が続く場合は眼科で確認しましょう。

目の状態ごとに、選ばれやすい治療の方向性を整理すると次のようになります。判断には個人差があり、最終的には主治医とご相談ください。

目の状態選ばれやすい方向性
点眼・レーザーで眼圧が落ち着いている手術は不要、定期観察
点眼・レーザーで下がりきらない標準的な段階まず線維柱帯切除術が検討される
濾過手術が無効だった・結膜瘢痕が強いチューブシャント手術が前向きに検討される
血管新生緑内障・ぶどう膜炎続発緑内障チューブシャント手術が選ばれやすい
軽〜中等度で白内障手術も予定しているMIGSや流出路を広げる手術が検討される

チューブシャント手術は2012年に保険で認められ、難治性緑内障の有力な選択肢として定着しました。「最後の砦」と表現されることもありますが、それは「眼圧を下げる手立てがまだ残っている」という意味でもあります。過度に悲観せず、主治医とよく相談してください。

手術の流れ

ここでは、検査から手術当日、その後の経過までの一般的な流れをご説明します。通院回数やスケジュールは施設や目の状態によって異なるため、あくまで目安としてご覧ください。

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    術前検査と評価

    目安:手術前に複数回

    視野・OCT・眼圧・隅角検査などで緑内障の進行度と目標とする眼圧を評価します。過去の手術歴、結膜や角膜内皮の状態も確認します。血液をさらさらにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を飲んでいる方は、その扱いを主治医と処方医で確認します。自己判断で中止すると危険なため、勝手にやめないでください。

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    麻酔・消毒

    目安:手術当日

    点眼麻酔に加え、テノン嚢下麻酔や球後麻酔などの局所麻酔を組み合わせて行います。手術中の強い痛みはほとんどありません。眼のまわりを十分に消毒してから手術を始めます。

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    プレートの縫着とチューブの挿入

    目安:約45〜90分

    結膜を開き、強膜の上にプレートを縫いつけ、チューブの先端を前房(または毛様体扁平部)に挿入します。チューブの露出を防ぐため、強膜や心膜のパッチで覆って保護します。所要時間は片眼でおおむね45〜90分が目安ですが、目の状態によって変わります。

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    (弁のないタイプ)流れすぎを防ぐ一時的な結紮

    目安:手術中

    バルベルトなど弁のないタイプでは、術後早期に房水が流れすぎて眼圧が下がりすぎるのを防ぐため、チューブを溶ける糸で一時的に結紮しておきます。アーメドのように弁のあるタイプでは、この調整が器具の弁によって行われます。

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    術後の眼圧調整(ヤマ場)

    目安:結紮糸が溶ける時期(おおむね4〜8週)

    弁のないタイプでは、結紮糸がおおむね4〜8週で溶けると房水が流れ始め、眼圧が下がってきます。この前後で眼圧が大きく動くため、頻回に通院して眼圧と前房・チューブ先端・プレート周囲の状態を確認します。それまでは点眼などで眼圧を抑えながら経過をみます。時期には施設や糸の種類による幅があり、個人差もあります。

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    長期の経過観察

    目安:生涯にわたり定期的に

    プレート周囲の被膜は年単位で変化し、厚くなると効果が薄れて眼圧が再び上がることがあります。緑内障そのものが治ったわけではないため、定期検査は生涯にわたり続けることが大切です。

入院の要否や日数は、施設や目の状態によって幅が大きく、日帰りのこともあれば数日〜1週間ほど入院することもあります。施設差・個人差が大きいため、受診先にご確認ください。

費用の目安

費用は すべて概算の目安 です。施設・地域・診療報酬改定の年度・所得区分によって変わります。正確な額は、受診先の医療機関や加入する保険者にご確認ください。なおチューブシャント手術は 保険適用 で、高額療養費制度の対象 のため、実際の自己負担はさらに下がることが多いです。

費用の目安(片眼・高額療養費の適用前)

すべて概算の目安です。費用は施設・所得区分・年度により変動します。高額療養費制度の対象で、実際の負担はさらに下がることが多く、正確な額は受診先や加入する保険者にご確認ください。

負担割合費用の目安(片眼)備考
1割負担 約2.5〜3万円前後〜検査・入院費・高額療養費の適用前
3割負担 約7〜10万円前後〜検査・器具を含む概算・高額療養費の適用前
入院した場合 上記+入院費数日〜1週間程度・差額ベッド代は別

もう少し詳しく見ていきましょう。いずれも目安であり、施設や状態によって異なります。

高額療養費制度の申請の流れや最新の上限額、所得区分は時期や保険者によって変わります。実際の負担額は、必ず受診先の医療機関や加入する保険者にご確認ください。

他の緑内障治療での位置づけ

緑内障の治療は、一般に 体への負担が軽いものから順に 進めます。点眼薬から始まり、レーザー治療(SLT)MIGS(低侵襲緑内障手術)線維柱帯切除術、そしてチューブシャント手術、という段階です。

その中でチューブシャント手術は、まず線維柱帯切除術が検討され、それが難しい目・効かなかった目・難治な緑内障で選ばれる 位置づけです。

緑内障の主な治療と、その位置づけ

体への負担が軽い順に並べた目安です。どの治療が向くかは目の状態によって異なり、最終的には主治医と相談して決めます。

比較の軸点眼薬レーザー(SLT)MIGS線維柱帯切除術チューブシャント
体への負担 最も軽い軽い(外来)軽い大きい大きい
眼圧を下げる力 弱〜中強い強い
主な位置づけ 第一選択点眼の補助・代替軽〜中等度へ無効例の標準手術濾過手術が難しい/再手術/難治例
房水のたまる場所 なしなし多くはなし濾過胞(結膜下)プレート周囲の被膜
通院・入院 通院のみ外来・日帰り多くは日帰り入院または頻回通院入院または頻回通院
主な対象 すべての病期開放隅角・高眼圧軽〜中等度中等度〜進行例難治例・再手術・血管新生緑内障など
保険 適用適用適用(多くの術式)適用適用

研究では、チューブシャント手術は線維柱帯切除術と比べて、長期の眼圧コントロールの成績が良好で、重い合併症がやや少ないと報告したものもあります。いずれも目安であり、どちらが向くかは目の状態によります。各治療の詳しい内容は、線維柱帯切除術MIGSレーザー治療(SLT)緑内障の解説ページ もあわせてご覧ください。

手術後の生活

緑内障の手術は、術後しばらくの過ごし方が結果を左右します。とくに弁のないタイプでは、結紮糸が溶ける時期の前後で眼圧が大きく動くため、指示された通院を守ることがとても大切です。

術後しばらく守ること(セルフケア)

  • 処方された抗菌・抗炎症の点眼を、指示どおりの回数・期間きちんと続ける
  • 目をこすらない・押さえない(チューブやプレートを傷つけないよう特に注意)
  • うつ伏せ・強い前かがみ・重い物を持つ動作はしばらく控える
  • 洗顔・洗髪・入浴を再開してよい時期は、必ず主治医の指示に従う
  • 指示された通院(とくに結紮糸が溶ける時期の前後)を必ず守り、眼圧のチェックを受ける
  • プール・温泉・サウナなど感染リスクのある環境は、許可が出るまで避ける
  • 結膜炎・ものもらいなど目の感染症は放置せず、早めに眼科を受診する

すぐに眼科へ(術後の危険サイン)

  • 目の強い痛み・急に強くなる充血・目やにの増加(感染のサイン)
  • 急に見えにくくなった・かすみが強くなった
  • ものが二重に見える(複視)・目を動かすと違和感が強い
  • 白目にチューブの先が出てきた・ゴロゴロ感が強い(チューブ露出の可能性)
  • 頭痛や吐き気を伴う強い眼痛
  • これらは感染・眼圧の異常・チューブ露出などのサインのことがあり、手術から年数が経っていても一刻も早い受診が必要です

術後の危険サインは、早く気づいて受診することが何より大切です。「夜だから」「明日まで様子を見よう」と我慢せず、強い痛みや急な見えにくさ、ものの二重見え、白目にチューブの先が見えるといった異変を感じたら、すぐに手術を受けた医療機関に連絡してください。

リスク・合併症

チューブシャント手術は難治な緑内障に対して有効な手術ですが、ゼロリスクではありません。チューブとプレートという器具を使うため、この手術ならではの合併症 があります。まれですが、次のようなことが起こりえます。

リスク内容・対処
低眼圧・浅前房房水が流れすぎて眼圧が下がりすぎることがある。とくに弁のないタイプの術後早期に注意
早期の眼圧上昇(弁なし)結紮糸が溶けるまでの間は眼圧が下がりにくく、点眼などで抑えながら経過をみる
チューブの露出・びらん覆っている組織が薄くなりチューブが露出することがある。感染の入り口になるため早めの対処が必要
角膜内皮細胞の減少チューブが角膜に近いと内皮細胞が減り、進むと水疱性角膜症の原因になることがある
複視・斜視プレートが眼を動かす筋肉に影響し、ものが二重に見えることがある。多くは一時的で経過とともに改善することが多く、残る場合もプリズム眼鏡などで対応できることがある
被膜の肥厚による眼圧再上昇プレート周囲の被膜が厚くなり、効果が薄れて眼圧が再び上がることがある。追加処置や再手術で対応
眼内炎(感染)まれだが最も重篤。発症すれば視力に重大な影響が出るため、術後の抗菌点眼と早期受診が予防の基本
視力・視野の悪化もともと進行した緑内障では、手術にかかわらず視野が悪化することがある

チューブの露出は早めの対処が大切です

チューブシャント手術で特に注意したいのが、チューブの露出 です。覆っている結膜やパッチが薄くなり、白目からチューブの先がのぞくと、そこが感染(眼内炎)の入り口になることがあります。

露出は 手術から年数が経ってから起こることもあります。過度に怖がる必要はありませんが、「白目にチューブの先が見える」「ゴロゴロする感じが強い」といったサインを覚えておくこと自体が、重い合併症を防ぐ第一歩です。気づいたら様子を見ずに、早めに眼科を受診してください。早期に対応できれば、追加のパッチで覆うなどの処置で対処できることが多いとされます。

よくある質問

Q チューブシャント手術を受ければ緑内障は治りますか?視野は戻りますか?
いいえ。この手術は眼圧を下げて緑内障の進行を抑えるための手術で、緑内障そのものを治したり、すでに失われた視野や視力を回復させたりするものではありません。緑内障で傷んだ視神経は元に戻らないため、目的は「これ以上悪くしないこと」です。それでも進行を食い止める意義は大きい手術です。効果や経過には個人差があります。
Q 線維柱帯切除術(濾過手術)とは何が違うのですか?どちらを先にしますか?
線維柱帯切除術は結膜の下に房水をためる水ぶくれ(濾過胞)を作る手術で、緑内障手術の標準です。チューブシャント手術は、チューブとプレートという器具を使って房水を眼の奥のプレートへ逃がす手術です。一般にまず線維柱帯切除術が検討され、それが難しい目や効かなかった目、難治な緑内障でチューブシャント手術が選ばれます。どちらが向くかは目の状態によります。
Q アーメドとバルベルトは何が違うのですか?どちらになりますか?
大きな違いは房水の流れを調整する弁の有無です。アーメドは弁が内蔵され、術後早期から眼圧を下げつつ流れすぎ(低眼圧)を起こしにくいのが特徴です。バルベルトは弁がなく、より低い眼圧が狙える一方、術後早期は流れすぎを防ぐためチューブを一時的にしばり、糸が溶ける頃から効き始めます。どちらが優れているということではなく、目標とする眼圧やタイプに応じて主治医が使い分けます。
Q 「難治性緑内障」と言われました。末期で失明するということですか?
難治性とは「点眼やこれまでの手術では眼圧が下がりにくい状態」という意味で、必ずしも末期や失明が近いことを意味しません。むしろチューブシャント手術という、眼圧を下げる手立てがまだ残っているということです。不安な点は主治医にそのまま質問し、よく相談することをおすすめします。
Q 手術は痛いですか?入院は必要ですか?
局所麻酔で行うため、手術中の強い痛みはほとんどありません。所要時間は片眼でおおむね45〜90分が目安です。入院の要否や日数は施設や目の状態によって幅があり、日帰りのこともあれば数日〜1週間程度入院することもあります。施設差・個人差が大きいため、受診先にご確認ください。
Q 手術の後、すぐに見えるようになりますか?術直後はかすみますか?
この手術は眼圧を下げるための手術で、視力を回復させるものではありません。術後数日から数週間ほどは、一時的に見えにくい・かすむといったことがありますが、これは通常の経過で、多くは時間とともに落ち着いてきます。一方で、痛み・充血・見えにくさが「急に強くなる」場合は別物で、合併症のサインのことがあります。様子を見ずに、早めに手術を受けた医療機関を受診してください。見え方が落ち着く時期には個人差があります。
Q 手術で「ものが二重に見える(複視)」ことはありますか?治りますか?
プレートが眼を動かす筋肉の近くに置かれるため、まれにものが二重に見える(複視)ことがあります。多くは一時的で、経過とともに改善していくことが多いとされます。残る場合でも、プリズム眼鏡などで見え方を補ったり、まれに手術で調整したりといった対処ができることがあります。気になる複視が続くときや、急に強くなるときは、自己判断せず主治医にご相談ください。経過や対処には個人差があります。
Q 仕事や運転、家事はいつから再開できますか?
再開できる時期は、目の状態・手術の内容・施設の方針によって幅が大きく、一概には言えません。術後しばらくは安静が必要で、とくに弁のないタイプでは結紮糸が溶ける時期の前後で眼圧が動くため、その経過と眼圧の安定をみながら、運転・仕事・家事・畑仕事などの再開時期を決めていきます。重い物を持つ・強く前かがみになる動作はしばらく控えます。再開のタイミングは必ず主治医に確認してください。個人差・施設差が大きい点にご注意ください。
Q 術後しばらく眼圧が下がらないと言われました。なぜですか?
バルベルトのような弁のないタイプでは、術後すぐに房水が流れすぎて眼圧が下がりすぎるのを防ぐため、チューブを溶ける糸で一時的にしばっておきます。この糸がおおむね4〜8週で溶けると房水が流れ始め、眼圧が下がってきます。それまでは点眼などで眼圧を抑えながら経過をみます。時期には施設や糸の種類による幅があり、個人差もあります。
Q 目にずっと器具が入ったままで大丈夫ですか?違和感はありますか?
入れたチューブとプレートは基本的に入れたままにします。多くの場合、日常で器具を意識することはありませんが、ゴロゴロする感じが強い、白目にチューブの先が見える、ものが二重に見えるといった症状があるときは、早めに眼科を受診してください。
Q 効果はずっと続きますか?また眼圧が上がることはありますか?
チューブシャント手術の眼圧コントロール成功率は、「成功」の定義(目標眼圧や追加点眼の許容)や観察期間、緑内障のタイプによって幅があり、短中期ではおおむね70〜90%と報告されています。ただし長期にはやや低下する傾向があり、これはプレート周囲の被膜が厚くなって効果が薄れ、眼圧が再び上がることがあるためです。その場合は点眼の追加や眼球マッサージ、追加処置や再手術で対応します。経過には個人差があり、術後も定期検査が欠かせません。
Q 費用はいくらですか?保険や高額療養費は使えますか?
この手術は保険適用です。3割負担の場合、片眼でおおむね7〜10万円前後が窓口負担の目安ですが、検査・入院などで変わります。高額療養費制度の対象で、ひと月の自己負担には所得に応じた上限があり、最終的な負担はさらに軽くなることが多いです。いずれも概算で、正確な額や申請方法は受診先や加入する保険者にご確認ください。
Q MIGSではだめなのですか?
MIGS(低侵襲緑内障手術)は体への負担が軽い反面、眼圧を下げる力には限りがあり、難治な緑内障や強く眼圧を下げたい場合には十分でないことがあります。そうした目では、より確実に眼圧を下げられるチューブシャント手術が必要になることがあります。どの手術が向くかは目の状態によりますので、主治医とよく相談しましょう。
Q 緑内障の手術は何回までできますか?この手術がだめならもう打つ手はないのですか?
緑内障の手術に回数の決まった上限はなく、状態に応じて術式を変えながら複数回行うことがあります。チューブシャント手術自体も、片眼に複数のプレートを追加する方法や、別の治療を組み合わせる選択肢が残ることもあります。打つ手がないと思い込まず、主治医や、必要に応じてセカンドオピニオンも活用して相談することをおすすめします。

受診のときに主治医に聞いておくとよいこと

手術を前に不安なときは、次のような点を主治医にたずねておくと、納得して手術にのぞみやすくなります。


緑内障のチューブシャント手術は、狭くなった視野や落ちた視力を回復させる手術ではありません が、点眼やこれまでの手術では下がりきらない眼圧を大きく下げ、進行に強くブレーキをかける ことができる、難治な緑内障の有力な選択肢です。「難治」と言われても、それは打つ手が残っているということでもあります。

気になる症状がある場合や眼圧が高めと言われている場合は、まず一度眼科で相談してみてください。効果や経過、費用には個人差があり、最終的な判断は主治医とよく相談して決めることをおすすめします。

緑内障そのものの全体像は 緑内障の解説ページ、標準的な緑内障手術は 線維柱帯切除術、より負担の軽い手術は MIGS、レーザー治療は レーザー治療(SLT) をあわせてご覧ください。