白内障進行抑制点眼薬とは
白内障進行抑制点眼薬は、目の中でレンズの役割をしている「水晶体」が濁っていくスピードを、少しでもゆるやかにすることを目的とした点眼薬(目薬)です。年齢とともに進む白内障、いわゆる「老人性白内障」の初期の段階で使われることがあります。
ここで、いちばん大切なことを先にお伝えします。これらの点眼薬は「白内障を治す薬」でも「視力を回復させる薬」でもありません。 一度濁ってしまった水晶体を、点眼によって元の透明な状態に戻すことはできません。あくまで、進行を「遅らせる可能性がある」補助的なお薬という位置づけです。
日本眼科学会も、白内障の根本的な治療は手術であるという立場を示しています。点眼薬は手術までの時間をかせぐための補助的な選択肢であり、効果には限界があることを、まず知っておいていただきたいと思います。
どんなしくみで効くのか
水晶体が濁る原因のひとつとして、体の中で生じる「酸化」によるダメージが関係していると考えられています。酸化とは、たとえるなら金属がさびついたり、切ったリンゴが茶色く変色したりするのと似たような反応で、目の中でも長い年月をかけて少しずつ進んでいきます。
この系統の点眼薬は、主にこうした酸化のダメージをおさえる「抗酸化」のはたらきなどを通じて、水晶体が濁っていく過程にゆるやかにブレーキをかけることをねらっています。
ただし、ここでも誤解のないようにお伝えします。ブレーキをかけるといっても、進行を完全に止めたり、後戻りさせたりするものではありません。効果は限定的で、どの程度役立つかには個人差があります。加齢そのものを止めることはできないため、点眼を続けていても白内障は少しずつ進んでいくのが一般的です。
主な薬の種類
日本で使われている代表的な白内障進行抑制点眼薬には、次のようなものがあります。商品名のあとに、お薬の成分名(一般名)をカッコで添えています。
| 商品名 | 成分名(一般名) | 特徴 |
|---|---|---|
| カタリン / カリーユニ | ピレノキシン | 古くから使われている代表的な白内障点眼薬。後発品(ジェネリック)もあります |
| タチオン | グルタチオン | 抗酸化作用をもつ成分を用いた点眼薬。白内障以外の目的で使われることもあります |
いずれも後発品(ジェネリック医薬品)が存在する場合があります。どのお薬を使うか、また後発品にするかどうかは、目の状態を診たうえで眼科医が判断します。市販されているものではなく、眼科の診察と処方が必要なお薬です。
なお、この系統には個別の解説ページはありません。それぞれの詳しい使い方や注意点については、処方を受けた際に眼科医や薬剤師にご確認ください。
どんなときに使うか(適応)
主に、**初期の老人性白内障**で、まだ視力への影響が大きくなく、すぐに手術をする段階ではない方に処方されることがあります。「白内障と言われたけれど、まだ日常生活に大きな支障はない」といった時期に、進行をできるだけゆるやかにする目的で使われるイメージです。
一方で、白内障がある程度進み、見えにくさが日常生活や仕事に支障をきたすようになった場合は、点眼薬ではなく手術が検討されます。点眼を続けるべきか、手術を考える時期にきているのかは、見え方の困りごとや水晶体の濁り具合によって変わってきます。
白内障そのものの症状や検査、手術の流れについては、白内障の解説ページもあわせてご覧ください。
副作用・注意点
比較的おだやかなお薬とされていますが、点眼薬である以上、副作用がまったくないわけではありません。報告されている主なものとして、次のようなことがあります。
- 目のかゆみ、刺激感、しみる感じ
- 目の充血、まぶたのかぶれ
- まれにアレルギー反応
こうした症状が出たときや、なかなかおさまらないときは、自己判断で続けたり中止したりせず、眼科医に相談してください。
また、もっとも大切な注意点は、点眼を続けていても白内障は進行しうるということです。「目薬をさしているから大丈夫」と安心して受診を先延ばしにしてしまうと、手術を検討すべき時期を見逃すことがあります。効果や副作用の感じ方には個人差がありますので、定期的に眼科で経過を診てもらうことが何より大切です。
上手な使い方
点眼薬の効果をきちんと得るために、一般的なコツをいくつかご紹介します。
- 手をきれいに洗ってから点眼しましょう。
- 容器の先がまつ毛やまぶた、目に触れないように気をつけます(細菌が入る原因になります)。
- 点眼後はまばたきをパチパチせず、目を軽く閉じて、目頭を指でそっとおさえるとお薬がよくなじみます。
- ほかの目薬と併用するときは、続けてささず、少し時間をあけてから次の目薬をさします。順番や間隔は眼科医・薬剤師の指示に従ってください。
- 決められた回数を守り、自己判断で量や回数を増やしたり減らしたりしないようにしましょう。
具体的な回数や量は、お薬の種類やあなたの目の状態によって異なります。処方時の指示を守ってお使いください。
よくある質問
この目薬をさせば手術しなくて済みますか?
いいえ。残念ながら、点眼薬で白内障を治したり、手術を不要にしたりすることはできません。進行をゆるやかにすることをねらう補助的なお薬であり、見えにくさが生活に支障をきたすようになれば、手術が根本的な治療となります。
視力が回復することはありますか?
濁った水晶体を点眼で透明に戻すことはできないため、この目薬で視力そのものが回復することは期待できません。あくまで進行を遅らせる目的のお薬で、効果には個人差があります。
いつまで続ければよいですか?
使用期間は目の状態によってさまざまです。定期的に眼科で経過を診てもらいながら、続けるべきか、手術を検討する時期かを相談していくことになります。自己判断でやめずに、眼科医の指示に従ってください。
白内障進行抑制点眼薬は、初期の白内障とうまく付き合っていくための補助的な手段のひとつですが、効果は限定的で、根本的な治療は手術です。目薬を使っているからと安心せず、見え方に変化を感じたときや定期的なチェックのためにも、自己判断で中止せず、眼科医に相談・受診をおすすめします。